それは月曜の朝4時半のことだった。
前日からなかなか寝付けなかった私の睡眠はとても浅く、まどろみに近い睡眠を繰り返していた。
夢を見るともなしに見ていたとき、
「ぎゃああああああああああああああ」
驚きとは違う、命絶える時の、男性の断末魔の叫び。
夢ではない。思わず飛び起きた。
ざわざわとする耳。重苦しい体。ぞわぞわする背。
まるで幽霊がそばにいるような感覚とはそのことか。
私は結局朝まで寝付けず、気がつくと8時を回っていた。
眠気に耐えながら仕事をする私。
朝呼ばれていた会議を終えると同じマンションの女性が声をかけてきた。
「マンションについてるエアコンって、加湿暖房ついてるじゃないですか。あれって水を入れないとダメって言われたんですけど、入れてます?」
「ええ?水なんて入れなくても大丈夫じゃないですか?」
私は聞いてみることにした。
「それより、今朝4時半頃なんですけど、なんか絶叫が聞こえませんでした?」
彼女は驚いた表情になり「ええ、朝5時前に目が覚めたんですけど、あれって夢じゃなかったんですか?」
「そうそう、ぼくも夢だとばかり……」私は頷いた。
「えー、男性のすごい声でしたよね?こわーい、聞くんじゃなかったー」
ぼくもだよ……。
疲れた……。
残業せずに帰って寝るはずだったのに結局いつもの時間まで会社にいるじゃないか。はやく帰ろう。
そのとき社内に鳴り響くハイパーユーロビート(注:ケータイの着うたフル。編注:鳴らしてもいいけど、音量は下げておきましょう。)
父親から電話である。
「おーい、×丁目の○○くんって知ってるか?」
心臓が止まった。
私の住んでいるのは×丁目である。
「え……死んだ?」思わず呟いた。
「おー、なんか今朝▲▲(実家の地名)で事故にあってなくなったそうだ」
「は?」
「出勤中にトラックと正面衝突したそうだ。同乗してた友達も即死らしい」
「それ何時ごろ?」
「8時」
起きてるっちゅうの。
どうやら関係ないらしい。×丁目が一緒だからびっくりしたじゃないか。今はマンションの真相のほうが気になる。
A: まっすぐ家に帰る。
B: 怖いのは苦手だ。寄り道していこう。
C: 友達の家に泊まろう。
怖いのは苦手だ。寄り道していこう。近くの繁華街で夕食を済ませて家に急ぐ。
ようやく家が見えてきた……。ん、あれはなんだ……?
そこには……
黄色いテープで通行制限されたマンションの入り口が……
「KEEP OUT 東京警視庁」
……なわけはない。駐車場に置かれたコーンと勝手に止めないように張られたテープだった。
私は生きている。
絶叫の真相はまだ分からない。
今晩も聞こえるのかもしれない。
今日も起こされるのかもしれない。寝るのが怖い。
誰か、助けてくれ………。
薄れ行く意識の中で、本当に誰か死んでたら会社にマンションを変えてもらおうと思う打算的な私が笑った……。
終
ネタじゃなくて実話|||orz
“叫び” への2件のフィードバック
おそらく、それは新聞配達のおにーさんが、何やら
なんでもない影か何かに驚いたんでしょうね。
ネコがぬ~っと出てきたとかさ…。そゆことない?
自分の影に驚いたりとか、、なんだわたしじゃん。みたいな。
さすが高校3年間の日記は無駄じゃなかった。 新人賞~直木賞はては芥川賞まで
いろいろネタのあるマンションこれからも期待する。