映画「それでもボクはやってない」を見てきた


見てきた人のステータス

なまえ:おで
れべる:27
けいれき:法学部卒(刑法と刑事訴訟法は分かってる)
しょくぎょう:某IT企業ネットサービス系(法律と関係ない仕事)

日本人全員に見て欲しい一作

誰ですか、お客さん入ってないなんて言ったのは。超満員じゃないですか。誰ですか、女子はいなくてくたびれたサラリーマンばかりなんて言ったのは。カップルと女子二人組ばっかりじゃないですか。誰ですか、一人で見に行けとか言ったのは。後からあれこれ話し合えないじゃないですか。

でも、今年を代表する一作というのは同感。痴漢冤罪裁判という重く難しいテーマを扱いながら、しかも2時間半近い長時間の作品でありながら、最後までだらけることなく、作品にのめりこむことができました。娯楽作品でもないのに、ここまで観客の気持ちを引き込める作品は確かに今年一年通しても、他に見つけられないかもしれません。ヒットメーカー亀山千広があえて、あまりお金になりそうにないこの作品に挑んだことを考えると、この作品を見る人が増えれば、日本映画にもっとよい作品が増えるかも…そんなことを思いました。

法律や裁判に詳しくなくても大丈夫

被疑者(まぁようするに犯人です)が逮捕され、裁判・判決に至るまでの手続きは主人公と同じ留置所にいるゲイの男が、日本の司法・捜査・裁判所が抱える問題については役所広司や瀬戸朝香演じる弁護士たちが劇中で分かりやすく丁寧に説明してくれます。法学部の学生さんが見ても勉強になると思うし、法律に触れてない人が見ても眠くなることもないでしょう。

痴漢の現行犯で捕まると、無罪を主張して裁判を闘うよりも、(やっていないとしても)罪を認めて罰金(おパンツの中に手を入れてなければ5万円以下)を払った方が男性にとってははるかに負担が少ない、ということを前提知識として持っておけばより分かりやすいでしょう。学校にも仕事にも行けず数ヶ月間勝ち目の裁判を闘うのと、誰にもばれずに(と劇中でも言われていますが、罰金刑って前科もつかないんでしたっけ?教えてエロい偉い人)罰金だけ払ってさっさと解放されるのと、果たしてどちらが楽でしょうか?

裁判官も官僚だって!?

法学部を出て、司法試験の勉強に途中で飽きたこんな私でも知らなかったのは裁判官の無罪に対する考え方です。正直目から鱗が落ちた思いです。劇中でも語られていますが、警察・検察が捜査をして出した起訴・有罪という結論に対して裁判官が無罪という結論を出すことは国家権力に盾突くということを意味します(裁判官だって国家権力であるはずですけどね)。また、裁判官の評価は事件処理件数で決まるそうです。検察官が起訴している以上有罪を確信しているわけで、それに対して無罪を出して裁判が長引けば自分の評価にも響いてしまう、と。すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束されるのではなかったのでしょうか(憲法76条3項より)。

この映画がヒットすればきっと

繰り返しになりますが、この映画は痴漢で男性が逮捕された時の日本の警察・検察の取調べ、裁判官の心象、司法のあり方すべての問題点を脚色なしに描いているので、まったく救いがありません。でも、男性は自分のために、女性はもし無実の人を痴漢だと言い張ったら、どれだけ男性が苦痛を味わうかを知るいい機会になると思います。男性が一方的に不利な今の現状はフェアじゃないし、かといって男性の冤罪が減るように法律や制度を変えれば女性の被害者が増えるし…でジレンマですね。この作品にも「オマエが言うな」な裁判官が出てきますが、参審制が始まれば少しは状況もよくなるのでしょうか。

あ、とりあえず男子諸君、痴漢関係のエロDVDはすぐに処分したほうがいいよ?裁判で不利不当な証拠として扱われるからね。

それでもボクはやってない公式サイト


“映画「それでもボクはやってない」を見てきた” への1件のコメント

  1. 痴漢に間違えられそうな殿方へ!
    電車では・・・①両手で本を読む。
             ②腕組みをする。がオススメです♪
    どうでもいいことですが・・・漢と書いて”おとこ”と読む場合がありますが、痴漢の”漢”からきているのですかね?(´∀`)

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