ジブリの新作『ゲド戦記』を見てきました。ジブリの新作ということで私の中でも期待が大きく、いろいろ光るところもあったのですが、残念な出来でした…。
まず肝となるシナリオが支離滅裂。ゲド戦記三巻以降を基にしたオリジナルストーリーであることや、ベースが『シュナの旅 ((王子が麦を求めて西へ旅するチベット民話をベースに宮崎駿が書いた絵本。ナウシカやラピュタのベースだと思われるシーンがたくさん出てくる。映画ゲド戦記の牛車や人身売買、生きることの大切さといったテーマは『シュナの旅』からだと思われる。むしろこっちを映画化して欲しかった。))』であることを抜きにしても、このお話だけを見たときに ((※筆者は原作ゲド戦記を読んでいない。指輪物語とホビットの冒険は読んだ。))なぜアレンが父親を殺すことになったのかとか、旅を続けていたハイタカが突然テナーの家に留まるようになったりとか、ラストシーンのテルーの姿の理由とか、はっきりいって意味不明。原作に書かれているのか、それとも脚本家の頭の中では展開されているのか?
演出も厚みがない。ストーリーのテーマである「生きることの大切さ」をひたむきに生きる主人公を描くことで表現すればいいものを、台詞で語らせてしまっているチープな演出。しかも同じ台詞で何度も。これで感動させられるとしたら、かなりおめでたいものです。
豪華キャストといわれる声の出演者もイマイチ。岡田准一と手嶌葵は明らかに棒読みが目立つ。遠くにいる人に呼びかけるだけの声色と、大ピンチの人に呼びかける声色が全く同じでげんなり。他にも聞き苦しい声が多く、極めつけ劇中のテルーの歌。CFでも流れてるバージョンはとてもよい歌なのに、劇中ではアカペラのバージョンで、これがまったく場面になっていない声の音。風が吹く草原で歌っているのに、聞こえてくるのは明らかに室内で録ったであろう反響のある声。草原で何に反響するんだ?!なんでこんな音でOKを出すのか疑問です。
映像と音楽がよかっただけに上記の点がとてもとても ((略してとてとて、またはとて2。))残念です。とくに映像は最近のジブリ作品のような透明感のある絵柄ではなくて、ナウシカやラピュタの頃の土臭い荒い映像で、とてもよかったと思います。わたしから言えるのはこの映画を見に行くかどうかは映像と音楽を楽しめるかどうかにかかっている気がします。簡単に感動できちゃう人は別ですけど。
普通映画というのは監督だけで作るものではありませんから、初監督となった宮崎吾郎氏の力量だけの問題ではないだと思います。映画として公開した以上、ジブリの名前で作品が扱われるのですから。ハウルも含めて疑問符のつく作品を連発する昨今のジブリにはちょっとがっかりなのでした。