『未知との遭遇』で地球人と宇宙人との交信を、『ET』で男の子と心を通い合わせるかわいい宇宙人を描いたスピルバーグが、再び宇宙人を描きました。
けれど、今回の宇宙人は一味違います。姿は不気味で、凶悪で、狡猾で。
「これは侵略じゃない。人類の駆除だ。」
100万の年月をかけた宇宙人の壮大な計画が今始まります。
真夏にぴったりの背筋が凍る宇宙人モノです。
『宇宙戦争』というタイトルを聞いて、トム=クルーズがスターシップにでも乗って、次々と敵の艦隊を破壊するんだろう、などと思っていた予想は見事に外れました(スターウォーズの見すぎ)
あるとき突然に、季節はずれの嵐とともに始まります。
大通りの交差点の地下から突然現れる、触手のついた巨大なウォー・マシン。次々と灰になる人々。軍隊の攻撃もまるで意味が無く、人々には成す術もありません。
トム扮するレイも子供たちを連れて、ウォー・マシンから逃げ延びることを選択します。逃げる中で、彼は車を奪い合って殺しあう人々、なんとかフェリーに乗ろうと押し合う様、自分が助かるためなら他人をも犠牲にする場面に直面します。
火星人の襲来を描きながら、実は描かれているのはやっぱり人間なのでした。
物語の終盤、レイは崩壊した家の地下に身を隠します。そこに入ってくる触手型の偵察マシン。
音を立てれば見つかって、血を吸い出されてしまう…。レイも、そして観客も、声も出せず、身動きすらできないジリジリと緊迫した画面が続きます。ここが最高に怖い。
ラストがちょっとあっけない感じもしますが、特撮によるビジュアルだけに頼っていない秀作だと思います。かなり怖いですが、ぜひ一度ご覧あれ。