『300』の驚異の映像世界ですっかりおでこを魅了したザック・スナイダー監督。彼の最新作がこの『エンジェルウォーズ』です。迫力満点のバトルシーン見たさにさっそく映画館に足を運んできました。
ミニスカ女子高生がマシンガンをぶっぱなして、日本刀で敵をぶった切るアキバ系アクション SF ファンタジー…として見るとストーリーなんてあってないようなもの、破綻してて当然と許せてしまうかもしれませんが、一筋縄では理解できないように実はすごく練りこまれているんじゃないかというのが僕の予想。
── 富豪の母親を亡くしたベイビードールと妹。遺言によるとその遺産はベイビードールと妹に譲ると分かり、強欲な継父は二人を亡き者にしようとする。身を守ろうとベイビードールが放った銃弾は不幸にも妹に命中してしまう。
継父はベイビードールが錯乱して妹を殺害したと警察に告げ、ベイビードールは精神病院へと入れられてしまう。ベイビードールの記憶を消し去るロボトミー手術は5日後に迫っていた… ──
というわけで、ここからは映画の確信に触れるため、ネタバレすると困る方は画像だけ眺めていただければと思います。基本的にミニスカ女子高生と鬼武者、ドラゴン、ロボットとの超マトリックス級のハイパーバトルと思ってもらえれば大丈夫です。
ベイビードールが踊る魅惑的なクネクネダンスというのがいったいどういうダンスなのかは最後まで分からず仕舞いなんですが。いずれにしても映像は超美麗。IMAX で見てよかった…!
さて、そろそろいきます。
映画誌や批評などでは、”ロボトミー手術を避け心の自由を取り戻すために精神世界へと逃れる” とあり、売春宿以降のシーン、具体的にはロボトミー手術なんてイケてない、とスイートピーが突っぱねるシーン以降はベイビードールの空想であるとされているようです。
たしかにベイビードールがダンスを踊っている(とされる)シーン=バトルシーンは売春宿の状況とは乖離しており、精神世界に舞台を移した戦いであると言えそうですが、それ以外の売春宿のシーンはすべて現実なのだと分かる証拠がラストに出てきます。
ロボトミー手術をされたベイビードールがブルーのところに連れていかれるシーンがそれで、コックのキッチンナイフは奪われていて腰にはなく、ベイビードールが火事を起こした部屋が黒焦げになっている様子が映しだされ、売春宿で4つのアイテムを手に入れたことが現実であったことがわかります。
推理小説で言うところのいわゆる叙述トリック的演出がなされていると僕は思ったのですが、どうでしょうか。ロボトミー手術を境界として時間軸を激しく操作してストーリーを組み立てているところからも作者の姿が垣間見えて叙述トリック的だと思えます。
唯一腑に落ちないのは売春宿ではブルーに尽くしていたベラ・ゴルスキーが、現実の精神病院ではブルーの行動を咎めており、その態度が相反するところなのですが……。
おで的おすすめ度:★★★★☆
原題:Sucker Punch 監督:ザック・スナイダー 出演:エミリー・ブラウニング、アビー・コーニッシュ、ジェナ・マローン、バネッサ・ハジェンズ、ジェイミー・チャン他