クリストファー・ノーラン監督の最新作にして話題の映画『インセプション』を見てきました。
――舞台は現実に近いけれど、他人の夢の中に入り込んだり、自分と夢を共有したりできる秘術があって、そうした術を知っている人は知っている世界。
コブ(レオナルド・ディカプリオ)は、他人の夢に入り込んではアイディアを盗む企業スパイの一人。ある時、アイディアを盗もうと思っていた起業家サイトー(渡辺謙)から、ライバル企業の経営者の御曹司にインセプション(アイディアの植え付け)を行うように依頼される――
一部繰り返しになるところもありますが、この作品の中では夢に以下のような作品独自のルールが設定されています。
- 他人の夢に入り込んだり、複数人で同じ夢を共有できる
- 訓練を積めば、自由に夢の舞台やストーリーを構成できる
- あまりに突拍子も無い舞台や設定にすると、夢の主がこれは夢だと気づいてしまう。気づき始めると、夢の登場人物が一斉に夢への侵入者に注目する。
- 夢から脱出する(覚める)には、夢のなかで死ぬか、あらかじめ決めた合図(キック)、たとえば決まった音楽を聞いたり床に落ちる衝撃、といったもので覚めることができる。
- 夢の中で夢を見ることができる。
- 夢の中の時間は現実の20分の1のスピードで流れる。夢の1時間は現実の5分に過ぎない。
なんかこう緻密な設定を理解していくだけでもワクワクしてきます。
あら、やだ、難しい、そう思ったあなた、たぶんこの映画向いてません。大味な映画を好きな方が映像やアクションシーンを目当てにしている方向けの映画じゃないってことです。
面白いのは、そのシーンが夢なのか現実なのかは分からないことがあるのは登場人物だけではなくて、視聴者もそうなのだということです。それを認識するための道具も作中では登場しますが(たとえば現実の世界で回した駒はやがて止まってしまうが、夢の世界の駒はいつまでも回り続ける、というもの)、あくまでその道具も登場人物が勝手に決めたルールに過ぎません。これがラストシーンに効いてきます。
この映画の醍醐味は、登場人物たちがこうしたルールに則って=それを現実のものと受け止めて、巧みな考察と行動でもって目的を達成しようとするところなので、このルールを理解した上でワンシーンワンシーンを読みといて行かないと面白さは半減してしまうでしょう。
こうした緻密な設定とストーリーこそが、マトリックスと比較される所以であり、CG を使ったダイナミックな映像や次々と変わるアクション・SF・カーチェイス・銃撃戦・ラブストーリー・人間ドラマといったチャンプルー的なストーリー構成ではないと思います(もちろん、これもまた素晴らしいのですが)。
個人的に評価したいのは、ストーリー上日本が出てくるから、ということできちんと日本で撮影を行ったというところです。冒頭の新幹線内のシーンや、ビル屋上でのシーンは実際に日本で行われたとか。
確かに社長だから金銀ギラギラの屏風のある部屋、とかいうイメージはどうなのかと思いますが、ローランド・エメリッヒの描く日本に比べたら遥かにリアリティがあります。
※以下で映画のラストシーンに言及しますので、まだご覧になっていない方は閲覧に注意してください!!
最初にこの映画を観終わったとき、ちょっと不満でした。
だって、インセプションを完了して虚無に落ちたサイトーを救いに行くんだって言ったくせに、あっさりとサイトーを見つけて、二言三言会話を交わしたら、もうハッピーエンドになってるんだもの。
ところが、子供たちに会いに行ったコブが回した駒は、回り終わる前に映画が終わってしまいます。現実では駒はやがて止まります。夢の中だとしたら、駒は回り続けます。現実だとしたらハッピーエンドと言えるでしょう。まだ夢の中にいるのだとしたら、コブが夢から逃れられていないということになります。
そうか、ノーラン監督は本当にコブがサイトーを見つけ出し、虚無に陥らず現実の世界に帰ってこれたのかどうか、視聴者の判断に委ねようとしたのか、と納得。
夢なのか、現実なのか、作中にはどちらとも解釈できる理由が散りばめられていたように思います。たとえば、夢のときとラストシーンの子供たちの服の違い。
このあたりを確かめたいので、ブルーレイディスクがでたら買ってしまいそうです。すっかり、ノーラン監督の手のひらで転がされてしまったおでこなのでした。
“映画『インセプション』” への1件のコメント
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